脂質異常症(高脂血症)の食事ケアポイント
高脂血症には大きく分けての3つのタイプがあります。
それぞれに少しずつケアポイントは違ってきますが、共通しているポイントは「エネルギーや脂肪を多くとりすぎない」こと。
それから肥満の状態にある場合には、肥満を適正体重に戻すこともポイントです。
そもそも脂質異常症って?
脂質異常症とは、血液中に含まれる中性脂肪やコレステロールの量が通常の範囲内にない状態です。
脂質やコレステロールの値を測定し、それぞれの数値が正常範囲から外れてしまった場合に適用されます。
以前の名称である「高脂血症」だと血中の様々な脂質が多いイメージがありますが、低HDLコレステロール血症のように良い働きをする脂質が少ない場合にも診断されるため、最近では脂質異常症と呼ばれています。
それぞれのタイプの特徴や基準値などを見ていきましょう。
高脂血症(脂質異常症)は3タイプ
脂肪やコレステロールが高い・低いと言われると、脂肪などが血液中に直に含まれているようなイメージがありますが、実際には少し違います。
もともと脂肪は水(血液)となじみにくいので、血液中を運ばれる時には特殊なたんぱく質に包まれて運ばれています。
中に脂肪を包み込んだたんぱく質のボールがあるというイメージが分かりやすいでしょうか?
それらのボールは包み込んでいる脂肪の構成割合によって、高脂血症(脂質異常症)は大きく3つのタイプに分けられます。
- 中性脂肪の割合が多いボールが多い
- 高トリグリセリド血症と呼ばれます。トリグリセリド=中性脂肪 です。
- LDLコレステロールの割合が多いボールが多い
- 高LDLコレステロール血症と呼ばれます。LDLコレステロールは、別名悪玉コレステロールとも呼ばれています。
- HDLコレステロールの割合が多いボールが少ない
- 低HDLコレステロール血症と呼ばれます。HDLコレステロールは、別名善玉コレステロールとも呼ばれています。
名称 | 特徴 | 基準値 |
---|---|---|
高トリグリセリド血症 | 中性脂肪が多い | 中性脂肪≧150mg/dl |
高LDLコレステロール血症 | LDL(悪玉)コレステロールが多い | LDLコレステロール値 ≧140mg/dl |
低HDLコレステロール血症 | HDL(善玉)コレステロールが少ない | HDLコレステロール値 <40mg/dl |
なぜ高脂血症(脂質異常症)が問題?
基本的に高脂血症(脂質異常症)は、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
ですが数値が悪い状態が長く続くと、血管を狭めたり詰まらせたりしてしまいます。
血管の壁にコレステロールが付着することで動脈硬化などを引き起こし、最悪のケースでは心筋梗塞や脳卒中につながってしまいます。
高脂血症(脂質異常症)をケアするために
高脂血症(脂質異常症)のケアは、それぞれ3種類のタイプごとに少しずつポイントが違います。
ですが共通しているポイントは、「エネルギーや脂肪を多くとりすぎない」「肥満を適正体重に戻す」の2点です。
それに加え、各タイプで問題となっている脂質の量を減らしたり増やしたりするように、食事の内容を調整していきましょう。
高トリグリセリド血症
- 果物・炭水化物・アルコールをとりすぎない
- 魚類に多く含まれるEPAを意識してとる
- 中性脂肪をおさえる
- 1日のエネルギー量(カロリー)を、25~30kcal/kgとして計算する
トリグリセリド(中性脂肪)を下げるために、特に意識したいのは1番目と2番目です。
肥満の場合には1日のエネルギー量をコントロールすることも必要ですが、まずは上から2番目までを意識することをオススメします。
一般的に果物は身体によいと言われていますが、食べ過ぎると糖分を多くとることになり、余ったエネルギーにより身体の中の脂肪を増やす結果になってしまいますので要注意です。
高LDLコレステロール血症
- コレステロールを下げてくれる食物繊維を多くとる
- 動物性の脂肪より、植物性の脂肪をとる
- 脂肪をとりすぎない
- 1日のエネルギー量(カロリー)を、25~30kcal/kgとして計算する
LDLコレステロールを下げるために、特に意識したいのは1番目と2番目です。
肥満の場合には1日のエネルギー量をコントロールすることも必要ですが、まずは上から2番目までを意識することをオススメします。
低HDLコレステロール血症
- 動物性の脂肪より、植物性の脂肪をとる
- たんぱく質を意識してとる
- 禁煙・肥満を解消する
- 1日のエネルギー量(カロリー)を、25~30kcal/kgとして計算する
HDLコレステロールを上げるために、上から3番目までを意識することをオススメします。
また適度に運動することでもHDLコレステロールを増やすことが出来るので、すき間時間を見つけてウォーキングなどを取り入れると良いと思います。
脂肪の質に気をつけよう
「脂肪をとりすぎない」と一口に言っても、魚に含まれているのも、バターに含まれているのも、ポテトチップスに含まれているのも、まったく同じ脂肪(あぶら)として考えて良いのでしょうか?
高脂血症(脂質異常症)の場合、植物性や魚類のあぶらは積極的にとりたいですが、動物性のあぶらや加工されているあぶらは避けたいものです。
脂肪の中には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」というものがあり、「不飽和脂肪酸」の中には「n-3系不飽和脂肪酸」や「n-6系不飽和脂肪酸」などが含まれています。
意識してとりたいのは「不飽和脂肪酸」と、その中の「n-3系」の種類のあぶら。
精製されているサラダ油よりもなたね油やオリーブオイルを、肉の脂よりも魚の脂を意識してとることがポイントです。